農業共済新聞記事バックナンバー

「中山間の特産に」

【加美町】「品質の良いワサビを作りたい」と話す加美町上多田川地区の氏家賢司さん(75)。同地区の3人の農家と協力して、山林を利用した畑ワサビ栽培を昨年11月に開始し、中山間地域で栽培する新たな作物として注目されている。

氏家さんは兼業農家として、主食用米1・7㌶、自家用野菜10㌃を栽培し、58年になる。
 中山間地域で米の転作に適した作物を模索しているとき、同町役場から、岩手県遠野市の畑ワサビ栽培視察の声がかかり、昨年7月に同市の山間部の林の木陰圃場で栽培されている畑ワサビを視察。氏家さんは「気候が似ている加美町なら栽培できるのでは」と考えたという。
 昨年8月、大崎農業改良普及センターやわさび商品大手の金印株式会社(名古屋市)と連携し、自宅の裏山と休耕田の一部を利用して、整地作業や土壌づくりを開始。11 月上旬には7㌃の畑に約7千本のワサビ苗を定植した。栽培期間は約20カ月で来年の6月に収穫を見込んでいる。
 湧き水や清流を利用して栽培する沢ワサビと違い、畑ワサビは林間の日陰で育て、主に茎を収穫する。畑ワサビの栽培は宮城県では初の試みだ。
 「栽培場所の確保が大変だった。メンバーと協力し、重機を使った抜根作業を行い、ワサビ栽培に適した農地に整えた。また、苗植えは手作業で手間もかかる」と氏家さん。「林間地でも日の差す場所もあるので、遮光ネットを設置するなどして生育状況を見守っている」と試行錯誤を重ねる。
 近年、ワサビの消費量は海外で急増しており、これまでは西日本を中心に生産されていたが、温暖化の影響もあり、東北地域での生産拡大が期待されている。
 氏家さんは、「関係機関と連絡を取り、収穫まで大切に育てていき、今後は仲間を増やして栽培面積の拡業を目指したい」と抱負を話す。 (伊藤健)

ページ上部へ