農業共済新聞記事バックナンバー
法人化で次世代へつなぐ
【亘理町】亘理町吉田の小野(おの)広志(ひろし)さん(63)は2019年6月、「株式会社ファットリア小野」を設立した。「これまでは震災から立ち直ることに力を注いできたが、これからは自分の農業を若い人に引き継いでもらえるよう、道筋を示していきたい。法人設立はその第一歩だ」と意気込む。
小野さんは2006年、家業を継ぎ、認定農業者として地域農業の一端を担ってきた。
農地を徐々に増やして順調に取り組んでいた矢先、東日本大震災に見舞われ、農地や作業場、農機具は津波で甚大な被害を受けた。
「代々続けてきた家業を自分で終わらせる訳にはいかない」と小野さんは復興支援事業などを利用し営農再開にこぎつけた。
「震災後に立ち上げた法人の中でも、覚えてもらえるような名前にし、珍しい作物や、他にはない取り組みで多くの人に知ってもらいたい」と小野さん。ファットリアは、イタリア語で農場の意味で、水稲49㌶と大豆5㌶、キャベツやトマトなど50㌃を妻・英子(ひでこ)さん(61)と息子の秀和(ひでかず)さん(37)と栽培する。
「震災以降、区画整備が進んだことや担い手不足から大規模化が求められている。持続的な営農には法人化が必要だった」と小野さんは、次代につなぐ農業を歩みだす。
「課題は自分の知識や経験をうまく次の世代に伝えられるかどうか。農業は、同じようにやっていても、いつもうまく行くとは限らない。そこが難しくおもしろいところで、感性や考え方が自分とは異なる若者たちにうまく伝えていきたい」と営農再開を果たした農地の継承に思いを抱く。