農業共済新聞記事バックナンバー
「食肉加工に腕振るう」
【加美町】加美町の「宮崎かもかも倶楽部(1998年設立・構成員8人)」で代表を務める津嶋敏行(つしまとしゆき)さん(62)は、1993(平成5)年の大冷害の経験から米作りにアイガモ農法を取り入れ、今ではアイガモの飼育と食肉の加工販売を行う。
宮崎かもかも倶楽部は水田4㌶でアイガモを利用し農薬使用を抑えた米作りに取り組む。津嶋さんは「大冷害のとき、この農法の水田だけは米が取れた。米とカモ肉が生産できるアイガモ農法に魅力を感じた」と話す。
アイガモは、ヒナの状態で200羽、5月下旬から7月中旬まで水田に放され、中耕除草や害虫駆除を果たしながら排泄物を肥料とし、収量確保の効果を上げる。その後、8月から12月頃までは陸に上げ、じっくり育てられる。
津嶋さんは同農法に取り組みながら、現在は東北でも有数のアイガモ専門の食鳥処理業者としてアイガモを食肉に加工。同農法に取り組む県内外の生産者からも依頼を受ける。
解体作業は、11月〜12月までの間で3千羽ほど行う。分業で、放血後に熱湯に浸け、機械で脱毛。専用のワックスと氷水の順に浸し、さばきやすくきれいな仕上がりになるよう残った羽毛を手作業で丁寧に取り除いていく。新鮮さを保つため、1羽5分ほどで部位ごとに切り分けていく。
「一般的には4カ月ほど飼育し出荷するが、かもかも倶楽部では8カ月飼育するため、味と旨みが濃く、歯ごたえのある肉質になる」と津嶋さん。「カモ肉は調理すると硬くなりやすい。スライスやミンチに加工することで食べやすいようにしている」と特別の思い入れを持つ。
販売は主に、宅配やイベントだといい、今後は加美郡内の同農法の拡大を目指しながら流通販路の拡大、加工品の開発を目指す。
「今年の10月から、加美町のふるさと納税の返礼品に登録された。多くの人にかもかも倶楽部のアイガモを知ってもらいたい」と話す。