農業共済新聞記事バックナンバー

「復興農地のサツマイモ」

【山元町】「食味が香港の消費者の嗜好(しこう)と合えば、自分たちが作る農産物は必ず売れるはず」と自信をみせるのは、山元町高瀬の「株式会社やまもとファームみらい野」常務取締役馬場仁(ばばじん)さん(58)。同社は今年2月下旬、生産するサツマイモの香港出荷を開始し、輸出という新たな道を進む。「山元町や宮城県のさらなる農業発展に貢献したい」と話す。

やまもとファームみらい野は東日本大震災で甚大な被害を受けた農地の維持活用を目的に、2015年に設立。社員11人とパート従業員40人で120㌶を管理し、園芸施設でトマトやイチゴを、露地ではサツマイモや長ネギ、タマネギなどを栽培する。
 香港への輸出は、福岡県の商社「九州農産物直販株式会社」と取引する。サツマイモの主要生産地である西日本で基腐(もとぐされ)病が発生し、同社に声が掛かった。
 馬場さんは「販路の確保は常に経営者の課題。今回は販路の拡大に加え、商社が全量買い取りしてくれるので、売上げの影響で生じるリスクが回避できる点も魅力だった」と話す。とはいえ輸出は初の試み。「輸送中の腐敗や皮剥けによるロスは最小減に抑えたものの、結果は8%のロスとなり、日本より厳しく感じた」と課題も見えている。
 香港でのサツマイモの販売は3月11日に始まった。偶然この日になったそうだが、震災から10年という節目の日と重なったことに「震災から復興した農地でできたサツマイモだから、なにか縁があるのかな」と従業員たちの話題になったという。
 2回目の輸出は、4月13日を予定する。馬場さんは「今後、香港の反応を踏まえて、今後ほかの農産物の輸出にも結び付けたい」と馬場さん。さらに、「今回の取り組みを多くの人に知ってもらい、自社の発展にとどまらず、宮城県の農業発展に寄与できればうれしい」と輸出がもたらす農業の成長に希望を見いだす

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