農業共済新聞記事バックナンバー

「露地プール育苗」

【栗原市】「温度が上がりすぎないので、苗の生育を作業の進み具合に応じコントロールできる」と効果を話すのは栗原市栗駒の「株式会社栗駒アグリスト」代表取締役の佐藤正富さん(43)。2016年から水稲育苗でビニールハウスを使用しない「露地プール育苗」に取り組んでいる。

同社は水稲30㌶を栽培し、苗箱5千枚を育苗する他、無人ヘリによる播種や防除を請け負っている。受託面積の増加でビニールハウスが不足したことにより、田植え作業と並行し移植後に空いたハウスで2度目の育苗を行っていた。
 以前から非効率と感じていた佐藤代表は、ネットで露地育苗の技術を目にし、試験的に開始。「発芽率が悪く西日本のような暖地の露地育苗のようにはいかなかったので、東北に適した方法を模索した」と話す。露地プール育苗は、播種後、育苗器へ3日ほど入れ、発芽をそろえた後、露地に並べ保温シートで覆う。3、4日ほどで緑化したらシートを取り、プールへ水を入れ移植まで育苗を行う。
 露地育苗の利点は、ビニールハウス設置のコスト削減になることに加えて、常に換気しているため苗焼けの心配もなく、プールの水量を調整することで低温への対応も容易なことだ。さらに、苗の生育をある程度調整することができる。ハウス育苗に比べ、種もみ270㌘の厚播きで30日を経過しても、ムレ苗になりにくいことも分かった。
 同社では、これらの特性を生かし、1ケ月ほど続く田植え期間に良い状態の苗を移植するよう心掛けている。
 佐藤代表は、「鳥害対策にネットを張るなど、露地育苗特有の手間はあるが、生育をコントロールできるメリットの方が大きい」と話し、「今後は、育苗にかかる労力削減と受託面積のさらなる増加に備え、ドローンによる条播き直播にも挑戦したい」と先を見据える。(佐々木貞)

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