農業共済新聞記事バックナンバー

「高みへ向けて」

宮城は全国有数の米どころであり、地域の特色を生かした野菜や果樹、花き栽培なども盛んだ。県では、さらなる生産振興を図ることを目的に「農林産物品評会」および「花き品評会」を実施している。2021年度の金賞(農林水産大臣賞など含む)を受賞した3人の農業者を紹介する。

【石巻市】「震災から10年たち、やっとここまでたどり着いた。今回、農林水産大臣賞を受賞し感無量」と話すのは石巻市の農事組合法人みのりの千葉昭悦代表理事(72)。
 石巻市北上町は東日本大震災の大津波により住民に多くの被害者が出たほか、農地や農業施設の流失など、未曽有の被害を受けた地区だ。
 同法人はいち早く復興を目指し、2013年4月に設立した。
 構成員3名、社員4名、パート10名で、水稲96㌶、大豆6.2㌶、つぼみ菜やレタスなどの野菜30㌃(パイプハウス22棟)、オリーブ4㌶を栽培する。
 被災農地は地力がなく、収量や品質を向上させるため堆肥を入れ、肥料の配合の工夫や有機物の投入など、試行錯誤しながら土作りに取り組んできた。
 津波の被害を受けた耕作地は20年にようやく全面復旧を果たし、本年度は「ササニシキ」と「ひとめぼれ」で9㌶の乾田直播を行った。
 現在は水稲を中心の経営だが、米価が下落している現状なのでさまざまな品目に取り組み、通年での雇用体制を整えていく予定だ。
 受賞したササニシキは被災した圃場で栽培した。今年の新嘗祭(にいなめさい)に献納されることになり、長年の苦労が報われる結果となった。
 千葉代表は「今後は受賞に恥じないよう、『食味』をさらに追求し、より良いものを作るため努力を日々重ね、消費者の皆さんへ届けたい」と抱負を話す。(畠山陽)

【白石市】「今回の受賞は、お客さまに加え、関係するみなさんのおかげ。日々の努力が報われた」と話す、白石市寺屋敷前の壽丸(すまる)果樹園の菊地哲夫代表(68)。
 1901(明治34)年創業の歴史ある同果樹園は、2.2㌶の畑で「ふじ」を中心に14種類のリンゴや洋ナシを、農薬使用量を節減して栽培する。
 菊地代表は「子供たちに安全・安心なリンゴを食べさせたいと始めたのがきっかけ」と話す。
 同果樹園は22年前、「みやぎの環境にやさしい農産物認証・表示制度」において、リンゴでは県内初めての「特別栽培農産物」認証を受けた。農薬と化学肥料の使用量を県の慣行基準の2分の1以下に節減している。
 今回受賞したリンゴは、特別栽培農産物(「認証農産物」)として販売。薬剤防除の回数を減らして栽培するため、コストを大幅に削減できる。
 「この地区は、盆地で寒暖の差が激しい。リンゴの甘みが強くなり、一般的な糖度約15度と比べると、18~20度近い高糖度の完熟リンゴに成長する」と菊地代表。「化学肥料は長年試行錯誤し、独自の配合にして使用量を抑えている」という。
 リンゴは『小十郎林檎(りんご)』という商品名で、市内の『おもしろいし市場』などで販売する。
 菊地代表は「今後も農薬使用を抑えて栽培した甘くておいしいリンゴを、多くの人に味わってもらいたい」と熱心に話す。
 ▽壽丸(すまる)果樹園=0224-25-4600(FAX兼用)(高橋康)

【登米市】「金賞受賞は2年連続。来年度は3連覇を達成させ、実力が確かだと証明したい」と話すのは登米市の若葉園芸の伊藤裕麻さん(36)。
 伊藤さんは2014年に、父親が経営する若葉園芸に就農。現在は伊藤さん夫妻と両親、従業員の計5名で運営する。30㌃の鉄骨ハウスでは年間を通してシクラメンやニオイザクラなどの鉢花を栽培し、全国の市場や直売所、近隣の生花店と幅広く出荷する。
 「花があるだけで生活に彩りが生まれ、気持ちに変化をもたらしてくれる。花をもっと身近なものにしていきたい」と伊藤さんは花の魅力を話す。
 受賞したシクラメン品種「クレヨンバイオレット」は、珍しいストライプ模様が特徴。栽培で常に気を付けていることは、「お客さまにとって管理がしやすいこと」という。植物自体が強く育てば管理もしやすく長く楽しめるため、土や肥料を吟味し、植物本来の力を高めている。
 「お客さまが購入し自宅に飾ってから花を眺める期間のほうが長い。店先に並んだ花がきれいでも、持ち帰ったものがすぐに枯れてしまっては意味がない」と伊藤さん。
 「今後は、流通業者と連携して企画やイベントなどを積極的に行い、品質の良い鉢花を届けていきたい」と将来を見据える。
▽若葉園芸=090-5188-7080(伊藤恵)

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