農業共済新聞記事バックナンバー
「垣根仕立てを採用/密植、小粒、成分濃く」
【七ヶ宿町】2020年、七ヶ宿町に果樹農園「Yuz farm & vineyard」を設立した荒井謙(ゆずる)さん(33)。昨年産のブドウとリンゴからは委託醸造で900本のワイン、シードル醸造できた。通信販売を中心に提供する。今後は栽培面積を拡大し、目標のワイナリー設立に向け取り組んでいる。
白石市出身の荒井さんは七ヶ宿町に「土地や風土、気候に魅力を感じた」という。現在同町の畑56㌃で「シャルドネ」を中心に5品種、1500本を垣根仕立てで栽培する。
大学と大学院でワインについて研究し、酒販店でのアルバイト経験や、日本におけるワイン学の第一線で活躍する教授との出会いが人生に大きな影響を与えたという。卒業後は長野県のワイナリーに就職し、栽培から醸造まで一貫してワイン造りに携わってきた。
同町にある畑は蔵王連峰の麓で標高が390㍍と高く、特有の寒冷な気候が特徴だ。また、父方の祖父母が暮らしていたなじみのある町でもあるという。
「ワイン用ブドウは糖度も大事だが酸度も重要。苗木を多く密植にし、小粒で成分の濃いブドウを作る」と荒井さん。糖度22%以上、酸度0・8%程度の成熟を目指す。本年は3年目を迎える樹体から300㌔の収穫を見込む。
さらに廃業となったりんご園を継承し、シードル用のリンゴを栽培。園地復興に「七ヶ宿りんご園再生プロジェクト」のメンバーとともに奮起する。
荒井さんは「近年、野生鳥害の被害が多い」と話す。「山間地のため、サルをはじめ小動物までの多岐にわたる獣害対策は、今後の重要課題」と話し、既に電気柵で対策しているが、それでも山手からの進入で被害は完全には食い止められず悩みの種だ。
「将来の目標であるワイナリー設立に向けて、まずは畑の規模拡大に力を入れていく。自社の畑で栽培した特色あるブドウから生み出されるワインを、多くの人に楽しんでもらいたい」と抱負を話す。
▽ホームページ=https://www.yuzfarm.com(佐藤和)