農業共済新聞記事バックナンバー
「地域の農地を守る」
【蔵王町】「イノシシやサル、クマなどの獣害から地域の農地を守りたい」と話す蔵王町遠刈田地区の杉山良夫(よしお)さん(65)と彰啓(あきひろ)さん(37)親子。繁殖用雌牛15頭、子牛6頭を飼養する傍ら、2022年4月に蔵王町鳥獣被害対策実施隊に任命され、親子で有害鳥獣駆除活動を担う。
良夫さんは1999年に第一種銃猟免許を取得。「祖父や父も狩猟を行っていたので子供の頃から身近だった」と話す。
2018年にUターン就農した彰啓さんは、地域のイノシシ被害を目の当たりにしたことをきっかけに、20年に第一種銃猟とわな猟の免許を取得した。「蔵王町では有害駆除対策として、狩猟免許取得の支援があったことも大きかった」と彰啓さんは話す。
同町鳥獣被害対策実施隊遠刈田隊には14人が在籍し、良夫さんが隊長を務める。
有害鳥獣駆除は一年を通して活動がある。くくりわなや箱わなは設置して終わりではなく、わなが作動しているか見回ることも欠かせない活動だ。
「毎朝、雨でも雪でも日の出とともに見回る」と彰啓さん。遠刈田隊ではわなの設置や駆除は必ず複数人で行う。個人の負担や危険を減らすことも目的の一つだが、「ベテラン隊員の経験や技術を若手隊員に伝えることが一番の目的」と良夫さんは語気を強める。
獣道にわなの存在が分からないように設置すること、壊れたわなの修理方法や散弾銃での仕留め方など、父から子へ技術が受け継がれていく。
数年前まで隊員の高齢化が問題となっていたが、彰啓さんのほかにも町の支援事業を利用し若手が増え、隊員の若返りが図られた。「先輩隊員の経験や技術を間近で学びながら活動ができることは貴重」と彰啓さんは話す。
「わなに害獣がかかったとき、牛の給餌やお産がかぶってしまっても、お互いに時間を調整して活動できている」と親子での活動を話す。
「これからも大きなけがなどすることなく、地域の農地を守っていきたい」と良夫さん。彰啓さんは「今後も父から技術や経験を受け継ぎ、成長していきたい」と前向きだ。(本郷)