農業共済新聞記事バックナンバー
「魅力を伝えたい」
【栗原市】農業大学校卒業後、有機農業先進国といわれるスイスに農業技術研修のため1年間留学した栗原市一迫の門傳菜々子さん(25)。帰国後、実家の有機JAS認証米、特別栽培米の生産販売の経営に加わりながら、ヨーロッパ野菜を少量多品目で栽培する。「環境に配慮し、農薬・化学肥料不使用で栽培するヨーロッパ野菜を身近に感じて味わってもらえるよう、生産を安定させていきたい」と未来を見据える。
菜々子さんは2019年から、畑10㌃で地中海原産の野菜「スイスチャード」や「ビーツ」「コールラビ」など20品目を有機栽培し、地元の産直施設に出荷するほか、飲食店に直接販売している。
農業大学校卒業後、単身スイスに渡り、環境に配慮した農業技術を学んだ。「スイスでは農薬を使わずに栽培された野菜がコンビニエンスストアなどでも手軽に買うことができることに驚いた」と菜々子さん。消費者、生産者ともに生態系や環境に及ぼす影響を最小限に抑える取り組みが盛んなスイスでの研修は、良い刺激になったという。
帰国後は、150年続く家業の「門傳醸造株式会社」で販売責任者を務める傍ら、「日本でも農薬不使用の野菜が身近なものになれば」と、ヨーロッパ野菜を農薬と化学肥料を使わずに栽培。「気温や湿度など、気候の違いで虫の食害や生育不良を起こす品種もあったが、土壌改良などを重ねた結果、少しずつ安定して収穫できる品目が増えた」と笑顔を見せる。
父・仁(まさし)さん(71)が水稲栽培で有機JAS認証を取得していることから、就農とともに有機農業は、菜々子さんの生活にすんなり溶け込んだ。同社が販売する日本酒も仁さんが手がける米を使用していて、さまざまなメディアに取り上げられている。県内はもとより関東方面にも出荷し、日本酒ファンから支持されている。
菜々子さんは「いつか私が栽培したヨーロッパ野菜を友人が調理し提供するカフェを一緒に開けたらうれしい」といい、「健康はもちろん、生産を安定させて、野菜の魅力を多くの方に知ってもらえるような活動をしていきたい」と意欲を見せる。
(佐藤利)