農業共済新聞記事バックナンバー
「地域の保存食『へそ大根』守り伝える」
【丸森町】「夜の寒さで凍り、昼の温かさで解けるを繰り返すことであめ色の『へそ大根』になる」と話す、丸森町筆甫の庄司一郎さん(70)。畑30㌃でダイコンを栽培し、昔ながらの製法でへそ大根を丁寧に加工・販売している。庄司さんは「地域に根差したへそ大根を伝承していきたい」と意気込む。
県の最南端、標高300~500㍍の山里にある筆甫地区の庄司さんにとって、へそ大根は昔からなじみのあるものだった。40年ほど前に両親がへそ大根を製品化し販売したノウハウを引き継いでいる。
良質なダイコンを育てるため、数年前から、鶏ふんを10㌃当たり約1㌧施用し、緑肥用ソルゴーをすき込んで土作りを行っている。「ダイコンの品種や品質を選定することはもちろん、化学肥料は使わずに土作りに取り組んでいる」と庄司さん。
栽培する品種は、ス入りが遅く、均等に細く長いダイコンが作りやすい「耐病総太り」だ。スが入ったダイコンは筋が残るへそ大根になってしまうため、使わないように細心の注意を払っている。
同町にある畑は標高320㍍と高地で、へそ大根作りは天候に左右されやすい。その年の天候を考え作り始める。収穫したダイコンは凍らないように囲いをして保存した後、天候を見ながらへそ大根作りを始める。洗って皮をむき、厚さ2.5㌢幅の大きさに輪切りにして、ゆでたダイコンは串に刺して干す。様子を見ながらその後2週間ほど自然乾燥させ、しっかりとうまみが凝縮された綺麗なあめ色に仕上げていく。
へそ大根は全量を県内の生協に出荷。商品は筆甫地区で昔から受け継がれる伝統特産品として知られている。
庄司さんは「筆甫の自然環境が生み出したへそ大根を、これからも守っていきたい」と力強く話す。(川村)