農業共済新聞記事バックナンバー
「次の世代へつなぐ冬水田んぼと渡り鳥の共生地」
【登米市】渡り鳥の飛来地、蕪栗沼に隣接した登米市南方町西部の沼崎・大平地区の圃場整備が昨年度より開始した。「地域の営農を継続していくためには、水田の整備は最重要課題だ」と話すのは、圃場整備実行委員長の佐藤久一さん(75)。自身も水稲2.5㌶を耕作し、地区の農業振興を目指す。
佐藤さんは、「この地域は水稲と畜産経営が盛んで、水稲以外は牧草などで畑作物の作付けは皆無だった。農地の多くが10㌃区画中心で耕作地も数カ所に分散していた」と話す。それに加えて水路が土水路のため排水が悪く、維持管理に労力を費やすにも関わらず収穫量は少ない地区で、「農地・水の予算で排水の改善を計画したが、予算が高額となりすぎて断念した。このままでは、生産性の向上や他の作物を栽培することも難しかった」と当時の苦悩を語る。
そのため、土地改良区へ公共事業として依頼をするために、地区営農計画の作成を開始した。
該当圃場58・9㌶には、91戸64人の耕作者がいたため難航するだろうと予想されたが、全員から同意を得ることができた。
「皆が同じ危機感を持っていたのかもしれない。担い手への面積集積を考慮して、他の圃場との交換耕作に協力する関係者の姿があった」と振り返る。
将来の耕作放棄地や、引き受け手不足などの不安解消のため、区画は1㌶を基本として整備するが、条件が整えば2㌶に拡大できるように整備を行っている。同委員会立ち上げから着工まで10年余り経過し、2027年度の完成を目指す。
これを機に馬鈴薯、ゆき菜など、高収益作物の作付けを計画していて、「離農を考えている方が安心して任せられる基盤を確立し、将来の担い手に大型機械による効率的な営農への移行を推進していきたい」と展望を話す。(渡邊)