農業共済新聞記事バックナンバー

「漁師が育てる東松島産『宮戸のモモ』」

【東松島市】「漁師が作った甘いモモを多くの人においしく食べてもらいたい」と話すのは、東松島市宮戸地区の奥松島果樹生産組合「いちじくの里」の尾形善久(おがたよしひさ)組合長(78)。園地では「あかつき」「まどか」「紅錦香(くにか)」の3品種、約170本を育てている。

 東日本大震災で甚大な津波被害を受けた農地の再生と、「果樹栽培で地域の新たな特産品を作りたい」と地元の被災した漁業者9人が立ち上がり、2015年に同組合を設立。翌年にイチジク400本を植樹し、栽培をスタートした。その後、モモ170本、柿70本を順次に植樹し、3か所の園地3㌶で栽培する。
 現在、組合には8人が所属。漁師のため、早朝の海で漁をしてからの作業を互いに助け合いながら日々取り組んでいる。
 「園地には水路がなく、植樹当初は野蒜(のびる)地区まで毎日水をくみに行き、一本ずつ水やりするため順調に育つか不安を払拭できなかった」と当時を振り返る。
 「今年は天候にも恵まれ、果実や葉の状態も良く順調に生育している」と尾形組合長。
 一本の木に約600~700個の果実を実らせるよう摘果し、5月下旬から一つずつ丁寧に袋掛けを開始。作業の効率を図るため、1人約22本と担当区域も決めている。また、品質向上のため、消毒作業は10日おきに欠かさず実施する。
 努力の結果、収穫量も増え、市場の評判や知名度も年々上がってきている。
 モモは、7月下旬頃から「あかつき」「まどか」「紅(く)綿(に)香(か)」の順に収穫期を迎え、現地での直売や、市場に出荷するほか、地域農業に関心を持ってもらうことを目的に、地元の子どもたちに収穫体験の場も提供する。
 「教えてくれた方の知識や技術を守り、基本を忘れず、今後も宮戸のモモをより多くの人に知ってもらえるように頑張っていきたい」と抱負を話す。(畠山陽)

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