農業共済新聞記事バックナンバー

「次代を担う若い力~魅力ある農業への一歩~」

近年、農家の高齢化や後継者不足が課題となる一方で、農業に興味や関心を持ち新規就農する若き担い手がいる。その中で自分の夢や目標に向かって挑戦する3人の今年の抱負を紹介する。

【角田市】角田市五区下地区の渡邊広輝(わたなべひろき)さん(27)は、祖父・一郎(いちろう)さん(68)と叔父・健(けん)さん(40)の3人で繁殖牛60頭と肥育牛110頭を飼養する。
 今年で新規就農して5年目となる広輝さん。専門学校を卒業後、美容師として働いていたが、一郎さんから「一緒に畜産をやってみないか」と誘われたことをきっかけに就農を決意した。
 「畜産に関しての知識がなかったため、祖父や叔父に教えてもらい、できることから取り組んできた」と広輝さん。大型特殊免許の取得や畜産経営の勉強会に参加し、畜産農家としての知識を深めてきた。昨年には家畜人工授精師免許も取得し、今後は家畜受精卵移植師免許を取得したいと、より一層力を入れる。
 牛にストレスを与えない環境づくりのため、堆肥をこまめに掃除し、敷き藁などの衛生面に気を配る。エサは、ビタミンを与える量やタイミングを調整し、食欲の減少を防ぐことで、牛の体重を増やすよう工夫する。
 一郎さんは「今後も学ぶ姿勢を忘れず、切磋琢磨しながらたくさんの経験を積んで頑張ってほしい」と笑顔で期待する。
 広輝さんは「出産から出荷まで一貫して世話をするので、牛の一生に携われることで一頭一頭愛情を持って接することができる。今後は頭数を維持しながら、出荷した牛の仙台牛率が高くなるよう品質の良い牛を育てていきたい」と今後の意気込みを話す。(川村)

【大崎市】「将来的には自宅の納屋を改装して、野菜の直売やビールの醸造をしていきたい」と夢をふくらませるのは、大崎市古川の佐々木一希(ささきかずき)さん(28)。水稲2・4㌶とブロッコリー60㌃、ネギ30㌃、ニンジン10㌃を露地栽培し、野菜は全てウジエスーパーへ出荷している。
 一希さんは大学卒業後、関東でビールの醸造会社に勤めていたが、ビールの原材料であるホップや麦の栽培に興味を持ったことをきっかけに会社を退職。地元に戻り、農業大学校のニューファーマーズカレッジで1年間栽培と経営について習得後、昨年4月に新規就農し、今年で2年目となる。
 「県内の市場価格や収益性を考え、現在の品目を栽培することに決めた」と一希さん。大学で学んだことや研修で知り合った仲間と情報交換したことを生かしながら、栽培に取り組んでいる。
 主力で栽培しているブロッコリーは、「グランドーム」「おはよう」「こんばんは」など合わせて6品種。時期をずらして播種と収穫を行い、多い時は1日で250個を収穫する。
 母の富美(ふみ)さん(61)は、「自分なりの経営方針を見つけて皆さんに喜ばれる野菜作りをしてほしい」と一希さんにエールを送る。
 一希さんは「人を雇い、現在栽培している野菜の収量を増やしていきたい。ホップや、ビールのおつまみになるエダマメやニンニクの栽培にも本格的にチャレンジしていきたい」と今年の抱負を話す。(青砥)

【栗原市】「自分が作ったコメをおいしいと言ってもらえることが何よりうれしい」と話すのは、栗原市栗駒の菅原郭伝(かづて)さん(20)。父の仁(じん)さん(53)が代表取締役を務める「アグリスガワラカンパニー」で、水稲30㌶、受託10㌶を栽培している。
 郭伝さんは、地元の高校の農業科を卒業後、新規就農し、今年で2年目となる。農作業する仁さんの姿を見て育ったため、農業は身近な存在で将来は自分自身も携わるだろうと思って学んできたという。
 「覚えることがたくさんあるが、少しでも早く一人前になりたい」と郭伝さん。大型特殊免許を所持しているため、耕起や代掻き作業を主に担当する。「実際に経験してみると学校で学んだ知識だけでは補えないこともあったが、作業するなかで春先から始まる農作業に確信を持って取りかかることができた」と自分自身の成長を感じている。
 分期栽培を行っているため、種まきを3回行い、6月上旬まで田植えを行う。また、除草や防除、畦塗りなどの農作業受託も総計110㌶行っている。今後も営農を継続していくため、スマート農業への移行を検討していくという。
 仁さんは「農業者としての自覚と誇りを持って、今できることをしっかり頑張ってほしい」と、期待を込めた檄を飛ばす。
 郭伝さんは「今後は、広い農場を効率よく作業するため、ドローンなどの免許取得と経営者としてのノウハウを学びたい」と話す。(小松)

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