農業共済新聞記事バックナンバー
「東北初の国産紅茶・東北を盛り上げたい」
【石巻市】「石巻産で東北を元気にしたい」と話す、有限会社ファーム・ソレイユ東北「お茶のあさひ園」工場長の日野優介さん(33)。「北限の茶葉」と呼ばれる桃生(ものう)茶を使った和紅茶「kitaha(キタハ)」を製造し、地域貢献に尽力する。
石巻市は400年以上の歴史を持つ茶葉の産地で、桃生地区でも長年茶葉の生産が行われてきた。同園は、1972年創業の老舗で、日本茶の専門店として2003年に法人化。17年6月に和紅茶を商品化した。
東日本大震災の経験から「次世代に何かを残し、石巻を明るくしたい」と父で社長の雅晴さんが、茶葉を発酵して作る和紅茶の開発に取り組んだ。
商品化にあたり、国産紅茶の先駆者である静岡県の故・村松二六(にろく)さんに師事した。桃生茶の茶畑が「紅茶に適している」と認められ、製造方法を学び作業をスタートした。
茶葉を摘みクール便で送ったが、静岡に着いた頃には変色や枯れたりしたため、ドライアイスを入れるなど、試行錯誤を繰り返した。新鮮な茶葉を届けたいとの思いから「車で8時間かけて茶葉を輸送した」と当時を振り返る。
完成した和紅茶は、えぐみが少なくすっきりとした味わいで、桃生茶のやさしい甘さも感じられる自慢の商品。19年の「G20大阪サミット」には、夕食会で各国首脳に振る舞われた。
また、22年6月、同地区に自社の発酵専用工場「kitahanone(キタハノネ)」を新設し、製茶ができるようになった。「静岡まで茶葉を運ぶ移動距離の削減が、茶葉の品質向上と生産量の増加につながった」と日野さん。
「石巻から全国・世界に発信し、東北のお茶文化を発展させ、関わるすべての人に感謝したい」と力強く話す。(今野純)