農業共済新聞記事バックナンバー
リンゴ農家3代目 信頼関係を大切に
結城翔太さん(亘理町)
【亘理町】「四季折々の風景や果実の成長を見るのが楽しい」と話す、亘理町逢隈の結城翔太さん(26)。両親とともに主力のリンゴ2ヘクタールやモモ50アール、サクランボ7アールのほか、水稲2・5ヘクタールを栽培する。
「寒暖差が小さいため亘理の『ふじ』は色が付きにくいが、降雪が少なく樹上完熟ができるので、蜜入りのよいリンゴを栽培できる」と魅力を話す翔太さん。10月上旬の結城果樹園では「秋映」や「あいかの香り」などが収穫期を迎える。生産の8割を占める主力のふじは、11月下旬から収穫が始まる予定だ。
翔太さんは大学を卒業後、アメリカのワシントン州で1年9カ月間研修を受け、2013(平成25)年11月に就農した。
研修先の農場では多品目の果実を栽培し、品質の高さを売りにすべて直接取引で販売。結城果樹園も同様に庭先販売が主要な販路なので、商品のプレゼンテーションをしながら対話を通じて顧客との信頼関係を築くことの大切さを学んだ。
また、病気などを見分ける観察眼にも驚かされたという。父・喜和さんも同じく細かいことに気づくことに長け、翔太さんは、虫や草など環境に気を使うようにアドバイスを受けながら栽培管理を学ぶ。
リンゴ栽培は翔太さんで3代目。初代である祖父のころは、苗を植えたばかりで売るものがない状態だった。喜和さんが継いだ時は、品数はある程度増えていたが売り先がない。そのため、ビニール袋に詰めた少量のリンゴを仙台まで何度も届けたりしながら販路を拡大していったという。
顧客は口コミで1人、2人と少しずつ増え、今では仙台圏を中心に、北海道から沖縄まで注文が寄せられる。翔太さんは、これまでに築いてきた顧客との信頼関係を大切にするとともに、若い世代にも果物を買ってもらえるようにPRを考えている。
今年からは新たに、秋保の醸造所と共同でシードル(リンゴのスパークリングワイン)の製造を予定。翔太さんは「亘理のリンゴを知ってもらうきっかけになれば、地域の活性化にもつながる」と力を込める。喜和さんは「品質の良さには上限はない。いいものを多くの人に食べてもらえるように頑張ってほしい」とエールを送る。