農業共済新聞記事バックナンバー

ハウストマト 地域農業再興の力に

サンフレッシュ小泉農園(気仙沼市)

【気仙沼市】東日本大震災で甚大な被害を受けた気仙沼市小泉地区で、先端技術を備えた2ヘクタールの大型ハウスが完成した。運営する「株式会社サンフレッシュ小泉農園」の今野圭市代表(57)は、「この地域は日射量が多く、冬場でも降雪が少ない。地の利を生かして良質のトマトを生産したい」と話す。震災で作り手がいなくなった農地の、新たな担い手としての活躍が期待される。
ハウス内では、ロックウール培地のつり下げ式高設ベッドで、桃太郎系の大型トマト3品種を主力に栽培。温湿度や二酸化炭素濃度は自動で制御され、栽培管理システムに転送された気象データを基に、養液の供給量も自動で調節される。
「量よりも質を重視したい」と意気込む今野代表。苗木4万3千株の育成を8月下旬から始め、9月中旬に定植した。長期多段取りで10月末から翌年7月までの収穫を見込み、年間生産量600トンを目標とする。
衛生管理を徹底し、入室時にはエアシャワーでほこりや雑菌を一人ずつ払い落とす。「これほどの規模だから万が一、病気がまん延すると死活問題。水際で防ぐことが大切で、慎重になってもなり過ぎることはない」と今野代表は説明する。アロハシャツの制服も、就業時に衣服を着替えることの意識づけに有効だという。
トマトは、サーフィンで有名な小泉海岸にちなんで「波乗りトマト とまたん」と名付けた。マスコットキャラクターを作成し、初年度は2億円の売り上げを目指す。
小泉地区は、震災の津波でほとんどの田畑が被災。農機具や施設なども失われ、営農再開の見通しが立たなかった。
サンフレッシュ小泉農園は、地元農家の及川衛さん、芳賀和之さんとともに2014(平成26)年10月に設立。被災した水田を借り、東日本大震災農業生産対策交付金などを活用してハウスを建設した。従業員はパートを含め34人。地元の被災者を中心に雇用している。今野代表は「一人一人が自分たちの事業だと思って取り組んでほしい」と話す。
今後は、復興農地での水稲の作業受託や、収穫を終えた苗木を使っての炭の生産なども計画している。今野代表は「地域農業の再生のためにも、まずはしっかりした経営基盤を築きたい」と意欲を示す。

ページ上部へ