農業共済新聞記事バックナンバー
骨付き生ハム “時間の力”使って
高橋精一さん(大崎市田尻)
【大崎市田尻】「農産加工物の裾野を広げたい」と話す、大崎市田尻の高橋精一さん(66)。「大崎産田尻生ハム工房」を運営し、自家産放牧豚を使った骨付き生ハム「大崎プロシュート」を製造販売する。
高橋さんは37年前に「田尻手作りハム」を立ち上げた。それ以来、ハムやソーセージなど畜産加工品の製造販売を先進的に行ってきた。さらなる可能性を求め、スペインレストランや大学に出向いて研修を重ねた後に、加工施設を新たに整備。薫煙や熱処理をしない生ハムの製造を2014(平成26)年から本格的に始めた。
生ハム作りは、豚後肢の骨付きもも肉を塩漬けすることから始まる。冷所で1カ月漬け込んだもも肉は、塩を付けたままの状態で3カ月間乾燥。洗浄・成型をした後、過乾燥を防ぐために、途中で小麦粉や塩コショウなどを混ぜた豚脂を表面に塗って熟成させる。
完成までに要する時間は約2年。1~1年半かけて長期熟成することで、肉質は硬くなり過ぎず、うま味成分が凝縮された仕上がりになるという。製造には温度管理が重要で、11月から翌年3月までの間に仕込みを行う。
「品質のいいものを作るには、肉質の良さが重要」と高橋さん。材料には、5ヘクタールの牧場で放し飼いした豚を使用する。生後3カ月齢で導入した豚は、約4カ月間野外で飼育。その間、配合飼料のほかに草や土を食べてストレスなく伸び伸びと育ち、きめが細かく脂にうま味のある肉質になる。
同工房では食育の一貫として、生ハムの作り方や食べ方の教室を開催。ハムやベーコン作りなども希望に応じて行い、参加者からは「本格的でおいしい生ハムがこんなに簡単に作れるとは思わなかった」と好評を得ている。
「おつまみに最適で、アボカドやチーズとの相性は抜群。サラダでもおいしく食べられる」と高橋さん。商品は予約制で、1本3万円。体験教室に参加すれば2万5000円(ともに税別)で購入できる。
高橋さんは「消費者との交流を広げ、畜産加工品への理解を深めてもらい、定着させるよう流通をつくっていきたい」と抱負を話す。
▽問い合わせ=大崎産田尻生ハム工房(TEL0229・39・1073)