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仙台せり 鍋需要を追い風に販路拡大へ

仙台市 大友 仁一さん

【仙台市太白区】近年、全国的にも知られてきた「せり鍋」に欠かせない「仙台せり」を栽培する、仙台市太白区中田の大友仁一さん(64)。同地区が古くから産地として有名な名取市と隣接し、土壌条件が似ていることに着目してJA仙台館内で唯一取り組んでいる。

大友さんは、水田25アールを4アールほどに区分けし、出荷時期に合わせてセリ2品種を手掛けている。「セリの産地の名取市と土壌条件が似ており、栽培方法も確立しているため、23年前から始めた」と大友さん。当初、中田地区で複数いたセリ農家も、今では大友さん1軒で取り組んでいる。
栽培では、水と苗作りに特に気を使う。水は、ボーリングで地下80メートルからくみ上げた豊富な地下水を利用。苗は、前年作から良質なセリを選んで用いている。
3月ごろにセリ田に仮植えし、5月中旬に代かきをした3アールほどの田に、株間20センチほどの間隔で1本ずつ手で置いていく。
大友さんは「6月から7月にかけての除草作業や病害虫防除が重要。雑草の勢いに負けるとセリのランナー部分が伸びずに成長が止まり、定植できなくなる。また、ウイルス病気が蔓延すると葉が縮んでしまうため、肥培管理に気を配っている」と話す。
その後いったん、園芸ハウスで保温しながら芽だし作業を施し、9月になって本田に定植。生育状況や気温条件などを考慮し、1アール当たり25~50キロほどの目安で区分けした田に分散している。
収穫時期が重ならないようタイミングを計り、活着するまでは台風や大雨などでの流失に注意しているという。
また、カモなどの鳥害対策が必要で、周辺を防鳥ネットで囲うほか、爆音などの装置で威嚇。大友さんは、「地下水は水温が一定で、カモにとっては最高の餌場。12月ころになると名取川にいたカモが集団で来る。根っこの軟らかい部分を食べられてしまうのを防いでいる」と話す。
収穫作業は、毎年10月下旬から翌年4月中旬までの6カ月間。ピークを迎える12月には、1日600束(1束100グラム)ほどを準備し、JAの共同販売を通じて出荷するほか、JA仙台中田支店敷地内の農産物直売所「味菜鮮」や県内の一部飲食店に提供する。
大友さんは「栽培面積を維持しながら直接販売できる契約先を見つけ、販路を広げたい」と意気込む。

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