農業共済新聞記事バックナンバー
目指すは梅干しの頂点
佐藤宗男さん(蔵王町)
【蔵王町】祖父の代からのウメ栽培を受け継ぐ蔵王町の佐藤宗男さん(51)は、梅干し作りに人一倍情熱を注ぐ。昨年は、梅干しの味を競う全国コンクールで見事2位を受賞した。「これからも研さんを積んで技術を磨いていきたい」と探究心を見せる。
佐藤さんと妻・多貴枝さん(51)は、10年ほど前から本格的にウメの生産・販売と、梅干し加工に取り組む。南向きの丘陵地2・6ヘクタールに、「白加賀」を中心に600~700本植栽。常時2人を雇用し、多貴枝さんも剪定作業に携わることから、樹高は作業効率を考えて抑えている。基本の開心自然型の仕立ては、父の作業を見ながら勉強した。日差しが行き届き、良品質のウメが結実するよう剪定し、「ひとつの枝ができるのに5年はかかる。3年後をイメージして、慎重に、かつ大胆に無駄な枝を切る」と話す。
完熟を見極めて収穫
消毒や化学肥料はできるだけ抑えるなど基本的な管理に独自の工夫を加え、佐藤さん方のウメは、ミネラルやクエン酸などの数値が高いという。
梅干し作りは、完熟果とミネラル塩、自家産赤シソだけを使用。完熟具合を見極め、全量の2割ほどにあたる7~8トンを収穫し、規格を統一して丁寧に作業していく。塩分は常温保存が可能な15%とし、「しそ漬け」と赤シソを加えない「白干し」の2種類を製造する。
大会の評価が自信に
大分県で開催される「全国梅干コンクール」は、就農時に「自分の梅干しがどう評価されるか」と出品を望んだが、東日本大震災で断念した。昨年の大会に初出品し2位を受賞。東北勢初の上位入賞を成し遂げた。佐藤さんのしそ漬けは、味に加え、色つや香りが良いと高評価を得たという。「やってきたことが間違いなかったと自信につながった。自然の恵みと、みなさんの協力のおかげ」と喜びをかみしめながら、「審査で『最優秀賞の梅干しと甲乙つけがたい味』と言われては、やはり頂点を目指したい」と笑顔も見せる。「梅庵宗久」のブランド名で、1パック(100グラム)税別350円などの商品を藤崎百貨店で販売。同店の中津川克典マネジャーは「コンスタントに販売数を伸ばしている。やわらかいだけでなく、薄い皮に肉厚な実で食べ応えがあり、東北人になじみが深い塩加減も認められている」と評価している。
▽全国梅干コンクール=大分県大山町で1991(平成3)年から4年に1回開かれている。全国にPRするとともに、梅干し作りの腕を競いながら技術向上をねらう。昨年10月の第7回大会には全国から過去最多の1302点が寄せられた。