農業共済新聞記事バックナンバー
ナシ 授粉作業にスピードスプレヤー活用
時間を大幅短縮
鈴木正志さん(利府町)
【利府町】ナシ栽培に30年以上取り組む利府町の鈴木正志さん(62)は、授粉作業にスピードスプレヤー(SS)を活用している。ナシの授粉は大玉で形の良いナシにするために必要な作業。鈴木さんは機械散布で時間短縮を成し遂げている。
鈴木さんが実践しているSS活用は、花粉を溶かした溶液を散布するというもの。農業雑誌の記事を参考に、水500リットル対してグラニュー糖200グラム、寒天パウダー2グラム、粗花粉40グラムを使用する。
散布液は、水にグラニュー糖と寒天パウダーを溶かしたところに、SSのノズルが詰まるのを防ぐため、粗花粉を網でこしながら溶いて作る。「グラニュー糖を入れるのは、真水に花粉を溶かすと活性が失われるため。寒天パウダーは、しっかりと受粉させるための展着剤の代わりとなる」と鈴木さん。食用の材料が多く、準備も容易だという。
導入のきっかけは作業の効率化だ。110アールの畑で「長十郎」や「幸水」「あきづき」など13品種を栽培する鈴木さんにとって、授粉作業は重労働になっていた。
大玉で、きれいな丸い形にするためにも気を抜けない作業だが、気温が15度を下回ると受粉しなくなったり、開花から早くても遅くても結実不良になるなど、タイミングが重要となる。
現在の方法は昨年から取り入れた。手作業で行っていた時は4人がかりで5日かかっていたものが、このやり方だと1人の作業でわずか1日で済むという。
1回の散布量は10アール当たり250リットル。花が上を向いてしまわないように、通常の使い方ではなく、ファンを回さず水圧だけで散布していく。品種によって開花時期が異なるため、1、2回散布するが、時間がたてば花粉の発芽率が下がるため、作った溶液は約2時間以内に使い切ってしまうのがポイントだ。
「気を付けるのは、SSの操縦だけなのでとても簡単」と鈴木さん。「歩留まりも手作業と比べて遜色ないので、いい方法だと思う」と秋の収穫に向けて期待を寄せる。