農業共済新聞記事バックナンバー
30年かけて理想の堆肥
中野正幸さん(仙台市)
【仙台市太白区】「野菜の出来は、微生物が多く、活発に腐食作用できる肥料を施した土壌で決まる」と話す、仙台市の中野正幸さん(74)。30年をかけてつくり上げた理想の堆肥を用いた土壌で、人の体に必要な酵素を多く含む機能性野菜作りに励む。
中野さんは在職中から、人の体内で食物を消化分解するほか、呼吸、運動、思考などを左右する酵素を重視。酵素が多く含まれる野菜を作ろうと勉強し、微生物が多い土壌が必要だと結論を出す。以来、30年ほどかけて微生物に好適な堆肥作りを追求してきた。
完成した堆肥は、米ぬかを主軸に黒糖、魚骨、魚粉、バクテリア、酵素を添加。低温でも微生物が分解できる魚骨を用いたり、黒糖は酢にして加えるなど工夫を凝らす。
「堆肥の成果は、年に1回収穫時期にしか確認できず、大変だった」と中野さん。栄養成長に優れていても収穫量が不安定だったり、翌年から連作障害を起こす場合もある。その年の原料の素材や分量などを記録し、成果や課題を毎年整理し作り上げることが大変だったという。
現在は、毎年約50トンを作り、全てを畑70アールと田20アールで自家消費。湿度20パーセント以下を保つよう風に当たらない場所で管理している。「トマトなどを毎年同じ場所に植えても連作障害が起きない上、根張りも良く、茎が太くて収量も安定している」と中野さん。この堆肥を使うと、土中の微生物がスムーズに分解を行い、作物への吸収が良く、生育がいいという。
育苗は、妻の紀代惠さん(74)が担当し、土壌管理や定植、栽培全般は中野さんが行う。定年退職してからは、夫妻が分担しながら、より農業に打ち込む時間が増えている。
「堆肥が完成するまでにかかった期間を振り返ると、経費の捻出や生活など大変なことが多かった。今では孫たちからおいしいと喜ばれることがうれしい」と紀代惠さん。収穫した野菜は、近所の人にも「他の野菜が食べられなくなる」と好評な上、地域の直売所で販売している。夫妻は「これからも体に良くて、おいしい野菜作りを続けていきたい」と話す。