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ナシ栽培42年 緻密な整枝・剪定

角田市 小野寺喜一さん

【角田市】「30年後の樹形をイメージして仕立てている」と話角田市の小野寺喜一さん(60)は、自宅近くの園地1.5ヘクタールでナシ栽培に取り組み42年になる。主幹長や主枝の角度を均一に整えて作り上げた棚仕立ては美しく、収穫するナシは繊細なやさしい甘さだと親しまれている。

小野寺さんは、祖父の代から続くナシ農家で、高校卒業と同時に就農した。段々畑だった園地を3回に分けて平らに作り直し、作業効率を改善。現在、「幸水」「豊水」「あきづき」「新高」の4品種を妻・京子さん(59)とともに手掛けている。
園地では、10アール当たり30本を目安に植栽し、管理しやすいよう主枝を2本にして棚仕立てを実施。「自分の背丈に合わせ、地上1メートルのところから主枝を出している。基本となる主枝の整枝、毎年繰り返す剪定は3年先の結果枝を育成することを考えて仕立てている」と小野寺さん。2本の主枝は角度や向きも統一し、棚面を重さ170センチ程度に作っている。
骨組みとなる主枝、亜主枝を決めたら、2~3年かけて側枝を整理。側枝は結実部の中心になる枝で、「側枝は3~4年以上結実させると良い果実がならなくなる。新しい枝を養成し、更新するときは気を使う」と小野寺さん。
今年、県ナシ現地検討会の視察園地になった小野寺さんのナシ園地について、角田市果樹振興協議会長の馬場晴作さん(69)は、「苗来の成長がそろっていないと主枝を作る高さや主枝を出す角度の統一は図れない。真面目で几帳面な小野寺さんだからこそ、根気強く整枝した」と評価する。さらに、「きちんと整えられているだけでなく、高さのある棚に仕立てることで機械が細かいところまで行き届き、防除や草刈りなどの作業効率も良く、参考になる」と話す。
冬の間に剪定し、3~4月に枝を棚に誘引・結束。花が咲き始めると、受粉、結実の確保、摘果と作業が続く。小野寺さんは「病害虫の防除や土壌管理、施肥、剪定など、どの作業も気を抜くことができない。労働力を考慮し、効率良くできるよう考え、ロスをなくすことを念頭に置いている」と話す。
収穫は、早生の幸水から始まり、晩生の新高が終わるまで休みなく続く。「雨が続くと日照不足で糖度が上がらない。天気が続くとうれしい」と小野寺さん。天気を見ながら収穫や出荷作業、来年に向けた防除作業に汗を流す。
収穫したナシは、JAを通じて生協に出荷。「めぐみ野梨」として店頭に並ぶ。小野寺さんは「毎年楽しみにしているというお客様の声が届くと張り合いになる。消費者に喜ばれるナシをこれからも提供していきたい」と話す。

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