農業共済新聞記事バックナンバー
津波被災農地で米作り再開 仲間と手を携えて
東松島市 奥松島グリーンファーム
【東松島市】東日本大震災からの復興が進む東松島市洲崎東名地域に2015(平成27)年3月、「農事法人組合奥松島グリーンファーム(菊地照夫代表理事組合長・組合員11人)」が設立された。同地域では、震災以降初の本格作付けとなった稲が黄金色に輝き、収穫時期を迎えようとしている。
奥松島グリーンファームは、震災前に野蒜生産組合、長浜耕地改良組合、東浦耕地組合、亀岡水利組合として活動していた11人が集まり誕生した。「百姓らしく、組合名では緑を強調した」と菊地組合長。「震災による津波で、田んぼは長い間、海のような状態だった。離農者が目立ち自分もどうしようかと悩んだが、自分には農業しかないとこの地域での営農再開を誓った。復興は道半ばだが、集まった仲間と手を取り合い、協力してやっていきたい」と話す。
東松島市の西側に位置する同地域は、津波・地盤沈下で80ヘクタールほどの農地が浸水・水没した。13(平成25)年から水を除く干陸化を開始すると、翌年から一部で水稲やソバなどを試験的に栽培。それらを経て今年、全農地80ヘクタールのうち約40ヘクタールで水稲の作付けが行われた。来年にはさらに作付面積を12ヘクタール増やし、18(平成30)年で全農地の作付再開を目指す。
菊地組合長は「以前と土壌状況が大きく変わり、圃場ごとの管理方法が今一つ分からなくなっている」と苦労を話す。
しかし、「農業は自然相手で思い通りにいくことの方が少ない。この地で稲を作れる喜びをかみしめながら毎日試行錯誤して頑張りたい」と前向きだ。
作業効率やコスト面を考え、今年作付けした40ヘクタールのうち10ヘクタールほどで乾いた圃場に直接もみを播く「乾田直播」を実施。今後はさらに乾田直播の面積を増やしていき、面積拡大にも対応していく。
また来年以降は、水稲だけでなく大豆や園芸施設栽培も手掛ける予定で、現在栽培しているコマツナに加え、チヂミホウレンソウなどの栽培も増やしていくという。
菊地組合長は「大変なことも多いが、毎日が充実している。震災から立ち直った土地で手掛ける強くておいしい農産物を、これからどんどん消費者に届けていきたい」と力強く話す。