農業共済新聞記事バックナンバー

転作田を有効活用 稲作、養鶏+放牧養豚

登米市 鈴木 豊さん

【登米市】「豚なら余っている鶏の餌を食べてくれるのではないか」-登米市米山町の鈴木豊さん(51)は、水稲5ヘクタール、飼料用米2.1ヘクタール、採卵鶏(平飼い)450羽を飼育する中、鶏に与えて余った餌の有効活用に養豚を思いついた。「養豚を始めるのなら転作田での放牧だと思った。田んぼに新しい価値を見いだしたい」と水田活用にも力を注ぐ。

鈴木さんは400年続く米農家の22代目。先代から引き継いだ理念「生産者が食べているのと同じものを消費者に届ける」を追求する。
自然循環型農業の取り組みの一つである養鶏業は37年。ストレスを与えないよう平飼いするほか、自家産の古米、飼料用米、くず大豆、近所の農家から調達する規格外の葉物野菜の中でもコマツナなどの青物野菜を豊富に与えている。
「市場に出せないというだけで、良品質のコマツナなどを生産者が春から秋にかけて持て余すほどもらっていた」と鈴木さん。養豚は、余剰餌の有効活用を考える中で思いついた。「始めるのなら転作田での放牧だと決め、県内外の放牧養豚農家を視察した」と振り返る。
試験的に菜の花を作付していた転作田77アールで、昨年、放牧養豚をスタート。電気柵を設置し、3区画に分けて簡易的な小屋を区画ごとに設けた。
小屋は、廃材のビニールハウス用パイプに遮光性の高いビニールを被覆している。1~2年で放牧地を移動するため、移設のしやすさを考えた。鈴木さんは「放牧に使用した圃場は水田や畑に転換する。有機資源を循環させる環境が整う」と話す。
養豚は全くの素人だったが、放牧することで一日2回の給餌、豚と電気柵のチェックに配慮すれば管理も難しくないという。
「広い場所で運動させているが、餌を豊富に与え、自由な環境でストレスなく育てることで、豚もも肉では珍しいほどさしが入った」と鈴木さん。「余分な餌が少なく、子豚の風邪などが心配な冬場は休業を考えていたが、『通年入荷できるのであれば取り入れたい』という業者が多い。通年飼育を検討中」と、販売する精肉「田んぼ豚」に手応えを感じている。
鈴木さんは「今後は取り組みを発信するだけでなく、成分分析などを行って『数値データ』も情報として伝えていきたい」と話す。
直接販売する米、卵の2商品に新たに豚肉を加え、鈴木さんは「安全・安心でおいしいということをPRしていきたい」と目標を話す。
鈴木さんの商品は、代表を務める「株式会社いなほ」のホームページ(http://inaho.bo-tome.com/)で販売している。

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