農業共済新聞記事バックナンバー

タデアイ栽培、藍染め、藍の茶 耕作放棄地を有効活用

【南三陸町歌津】南三陸町歌津の山あいに位置する払川地区で、タデアイ(藍)を栽培し、藍染めと藍を原料としたお茶を製造する合同会社「でんでんむしカンパニー」代表の中村未來(みく)さん(32)。2012年に東京から移住し、父・康博さん(65)と母・雪子さん(62)と栽培するタデアイは今年で5期目を迎えた。

 中村さんは、2011年に東日本大震災のボランティア活動に参加。被災後も自然の厳しさを受け入れて共に生きる南三陸の人たちに魅了され、「被災した人が暮らしを取り戻す手伝いをしたい」と一念発起し同町に移住した。
 復興応援隊として活動するなかで、耕作放棄地が増えていることを知った中村さん。農地再生の活動をしながら自らも土地を借り、町内で誰も栽培していないタデアイの栽培を始めた。
 3月、ポットに播種してハウス内で育苗し、4月に圃場へ移植する。7月から10月まで、成長を見ながら収穫していく。一度刈り取った後に追肥して、複数回収穫する。
 除草や水やりなど全て手作業なため、畑10㌃を借りるうち作付けするのは5㌃にとどまる。天候に左右される農業の難しさに試行錯誤の毎日だという。
 町内の牧羊場で生産された羊毛を藍染め商品に取り入れ、地元の人が手作りでアクセサリーなどに商品化。中村さんは「町内産の『モノ』と、南三陸の『人』で仕上げる『Made In 南三陸』を意識している。藍を通して、南三陸の発信に協力したい」と話す。今後は、藍細工を作る工房とのコラボも考えている。
 染料の他に、漢方として解毒作用や冷え性を改善する効能があるとされていることから、「あい茶」(15㌘入り・600円)を販売。「食用に利用することで需要を伸ばし、栽培面積を増やせれば耕作放棄地の有効活用にもつながる」といい、「地域の新たな産業となればうれしい」と笑顔で話す。
 中村さんは「これまで南三陸になかった藍に、地元のみなさんが興味を持ってくれて、少しずつ手ごたえを感じています。復興支援で購入してくれる一時的なものではなく、何度も手に取ってもらえる商品づくりが目標」と意気込みを話す。

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