農業共済新聞記事バックナンバー
地域を挙げて維持・伝承 ~伝統野菜「鬼首菜」~
【大崎市鳴子】大崎市鳴子鬼首地区の伝統野菜「鬼首菜」。うま味とほのかな辛味を持ち合わせ、同地区では積雪期の貴重な野菜として、古くから自家採種し栽培を続けてきた。髙橋一幸(たかはしかずゆき)さん(68)は、鬼首菜の存続を願い、新しい活用法の追求と普及に取り組む。
髙橋さんは、畑5アールで鬼首菜のほか多品目の野菜を栽培するほか、水田1.7ヘクタールで水稲品種「ゆきむすび」、60アールでソバ、10アールでブルーベリーを手掛けている。
鬼首菜は、通称「ずなっこ」と呼ばれ、カブ菜やカラシ菜に似たしゃきしゃきとした食感と香辛性を持つ。寒さに強く、気温の低下で栄養分と香辛成分が増すため、冬場の貴重な作物として、漬物「ふすべ漬け」などで親しまれてきた。
8月下旬に播種し、40センチメートルほどに成長した鬼首菜を11月上旬に収穫。栽培には水はけの管理と適切な間引きが重要だという。一部を畑の雪中で越冬させ、5月末から6月にとう立ちした花を枝ごと刈り取り、自然乾燥。その後に種子をたたき出して採種する。
「昔から母親が鬼首菜を自家採種して栽培してきた。以前は7、80戸ほどの栽培農家がいて、種や苗を地域で譲り合っていた」と髙橋さん。現在、栽培を行うのは髙橋さんを含めて2人だ。
鬼首菜を復活・保存しようと昨年、特定非営利法人「鳴子の米プロジェクト」が地元農家や関係者らを参集して、調理・加工方法を検討。鬼首菜の特産品化を目指す取り組みを始めた。髙橋さんもイベントに参加し、栽培の様子や管理方法を説明し、普及を進める。
「伝統ある鬼首菜を守る栽培農家が増えてほしい。漬物以外の調理や加工品を追求して、特産品が出来上がれば鬼首地区のPRにもつながり、栽培農家も増えるはず」と髙橋さん。鬼首菜の普及を願い、多くの人に鬼首菜を知って、食べてもらえるよう栽培を続けていくと意欲的だ。