農業共済新聞記事バックナンバー

復興に挑戦「次世代施設園芸を展開」

【石巻市】石巻市北上町でトマト1.1ヘクタールとパプリカ1.3ヘクタールを栽培する株式会社デ・リ―フデ北上(鈴木嘉悦郎代表取締役・71)。東日本大震災後、「どうしてもこの地で復興を成し遂げたい」との強い思いから、2014(平成26)年に農水省の支援事業に加入し、ICT(情報通信技術)を活用した、栽培管理を導入した。

鈴木さんは、石巻市釜谷崎地区で代々続く稲作と茅葺(かやぶ)き会社を経営していたが、11年(平成23年)東日本大震災で同地区23戸は壊滅。災害期間区域となった。
「がれき置き場になった自分の土地に、ただ呆然として何も考えられなかった」と鈴木さんは当時を振り返る。
その後、生まれ育った地域の復興を決意し、同法人で営農に着手。14(平成26)年には農水省の「次世代施設園芸導入加速化支援事業」の宮城拠点として、2.4ヘクタールの大型ガラスハウスを設立し、沿岸部の気象条件に適したトマトとパプリカの栽培を開始した。
栽培過程の機械化とICTを活用したオランダの高度な環境システムを導入して、光や温度、二酸化炭素の濃度など栽培環境を一元管理する。
さらに、暖房は石巻地区森林組合で製造している間伐材を使用した、木質バイオマスボイラーや地中熱を利用して化石燃料の削減に努める。
1期作目の栽培から10アール当たりの収量がトマト36トン、パプリカ26トンと目標を大きく上回った。現在、3期作目の収穫を行っており、10アール当たりの収量がトマト40トン、パプリカ28トンの収量を見込む。
トマトは「富(とみ)丸(まる)ムーチョ」「リッチリコピン」「カナバロ」の3品種。パプリカは、肉厚で色鮮やかな赤、黄、オレンジの三種類を栽培。特に富丸ムーチョはうまみを引き出すグルタミン酸が豊富。糖度と酸味のバランスが良いうえ、日持ちが良く、崩れにくいため関東圏のシェフやバイヤーにも好評だという。
鈴木社長は「今後も高品質なものを提供していきたい。将来的には第二・第三農場を作って一大産地にしたい」と地域の雇用創出にも意欲的だ。

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