農業共済新聞記事バックナンバー

「ナシ産地の担い手に」 利府町 地域おこし協力隊

【利府町】利府町森郷(もりごう)で、特産「利府梨」の栽培に取り組む吉川一利(きっかわかずとし)さん(30)と近江貴之(おうみたかゆき)さん(35)。農業に取り組もうと地域おこし協力隊として同町に着任し、SNS(会員交流サイト)を通じ地域の情報を発信するなど、「ナシ産地が抱える課題に取り組み、地域ブランドさらに発展させたい」と力を込める。

2人は町内のナシ農家やJA仙台梨部会などの指導のもと、離農した生産者から借り受けた8㌃の園地で、ナシ品種「長十郎」「幸水」「あきづき」を栽培する。
 「高齢化で廃業するナシ農家が多く、収益率は高いのに、担い手が不足しているのはもったいない」と吉川さん。直売所だけではない販路の開拓や、さまざまな調理法を提案し、利府梨の魅力を伝える。
 「自分たちだからこそ出せるアイデアで、『おもて梨』したい」と意気込んだ。近江さんは、「加工用の梨を使った『梨カレー』などおもしろいのでは」と構想を話す。
 同町ナシ農家・伊藤邦雄(くにお)さん(69)は指導者の一人。「地域を盛り上げようと真剣に考えてくれている。これからの町や利府梨を背負っていく存在になってほしい」と期待する。
 2人は自身のブログでナシ栽培の様子を公開したり、町の歴史や名所、集落の行事などを紹介したりと、積極的に情報を発信。さらに、地元の小学生や保育園児たちを園地に招き、「子供たちに、利府梨の魅力や農業の楽しさ、かっこよさを伝えたい」と取り組みを広げる。
 秋に収穫した約2㌧のナシは、新規商品の開発に利用する他、「十符(とふ)の里・利府フェスティバル」などのイベントやPR活動で提供する。
 地域おこし協力隊の契約が終了する22年からは、それぞれが独立して営農を始める予定で、「何よりも採算ベースに乗せるために、栽培面積を増やし、収量を確保するのが急務。技術を習得し、安定した経営を目指したい」と今後を見据える。

 

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